氏を回護することの至れる、鎌倉幕府の吏人の編著としては奇怪に思はるゝ條少からず、星野博士は吾妻鏡を評して
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叙事確實質ニシテ野ナラズ簡ニシテ能ク盡クス頼朝ノ天下經營ノ方略北條ノ政柄攘竊ノ心曲等描寫ニシテ其顛末を具備セリタヾ頼家變死ノ一事ハ曲筆ヲ免レズト雖、其餘ハ皆直書シテ諱マズ
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といはれ
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頼朝ノ傍※[#「女+搖のつくり」、第4水準2−5−69]政子ノ妬悍ノ類隱避スル所ナキヲ以テモ之ヲ知ルベシ
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とて其直筆の一例となされたれども、王朝淫靡の餘風を享けたる當時にありては男女の關係の亂れたりしは事實にして、當時の人も強てかゝることを秘密にせむとの念慮熾ならず。これに關しては其倫理の標準は他の人倫關係に於けるよりも數等低かりければ、從ひて曲筆を爲すの必要を感ずること薄し、故に單にこれのみを以ては、吾妻鏡は一般に直筆なりとして之を信用すること難きものあるに似たり、今頼家變死の事件以外に曲筆と思はるゝ二三を例擧すべし
建仁三年九月五日の條に
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將軍家御病痾少減、※[#「(來+力)
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