受取れぬような悪声が、彼等の上に放たれたのであった。が、これは独り当時に限られたことではない。現在われ等霊界の使徒に対して向けられる世人の疑惑、当局の圧迫とても、ほぼこれに等しきものがある。
 但《ただ》しかくの如きは、人文史上の常套的事象であるから、あきらめねばならぬ。新らしい真理に対する迫害は、宗教と言わず、科学と言わず、人類の取扱う、いかなる原野に於《おい》ても、例外なしに行われるのである。これは人智の未発達から発生する、必然的帰結であるから致方がない。耳馴れたものほど俗受けがする。之に反して耳馴れぬもの、眼馴れぬものは頭から疑われる。
 で、われ等の仕事が、前途幾多の荊棘《けいきょく》に阻まれるべきは、元より覚悟の前であらねばならぬ。われ等の啓示は往々にして、未開なる古代人の心を通じて漏らされた啓示と一致せぬ箇所がある。これは使用する器の相違が然《しか》らしむるところであるから、如何ともする事はできない。
 言うまでもなくバイブルは、幾代かに亘《わた》りて受取られたる啓示の集録である。かるが故に神につきての観念は、人智の進歩に連れて次第に変化し、枝葉の点に於《おい》ては、必ずし
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