寄木細工式の繁瑣な神学を捏《でっ》ち上げた人達、朝に一条を加え、夕に一項を添えて、最後に一片の死屍にも似たる、虚礼虚儀の凝塊《かたまり》を造り上げた人達――それ等はイエスを冒涜者と見做し、神を傷け、神の掟《おきて》を破る大罪人であると罵った。かくて最後に、イエスを十字架に送ったのである。
今日では何人も、イエスを神を涜《けが》す罪人とは考えない。彼こそは、実に外面的の冷かなる虚礼虚儀を排して、その代りに、陽《ひ》の光の如く暖かなる内面的の愛を、人の心に注ぎ込んだのである。が、当時の当路者達は、イエスを以《もっ》て、漫《みだ》りに新信仰を鼓吹して旧信教を覆すものとなし、之《これ》を磔刑に処したのである!
イエスの徒弟の時代に至りても、一般民衆は、尚お未だイエスの真の啓示を受け容るる丈の心の準備がなく、徒弟達に対する迫害は、間断なく繰り返され、ありとあらゆる讒罵《ざんば》の雨が、彼等の上に降り濺《そそ》いだ。曰くイエスの徒弟どもは、極端に放縦《ほうじゅう》無規律なるしれもの[#「しれもの」に傍点]である。曰く彼等は、赤児を殺し食膳に上せる鬼どもである。今日から顧れば、殆ど正気の沙汰とは
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