かるものが甚《はなは》だ多く、長き年代の間に蓄積されたる附加物が、中心の真理を隠蔽して居る。例えばかの選ばれたる少数者――そうしたものをわれ等は知らない。選ばれたる者というのは、天地の大道を守りて、自からを救うもの以外には絶無である。
又われ等は、盲目的信仰の価値に就《つ》きては何事も知らない。むろん、素直に真理を受け入れ、片々《へんぺん》なる疑心暗鬼の煩《わずら》いから超脱する事は甚《はなは》だ尊い。それは神心の現れで必ずや天使の守護に浴し得る。が、われ等は断乎として、かの有毒な神学的教義を排斥する。それ等の教義が教うる、教会のドグマを厳守すれば、地上生活に於ける一切の悪徳邪行から、きれいに一掃せられて、神の恩寵に浴し得ると……。凡《およ》そ天下にこれ以上に、人の魂を堕落せしむるものはあるまい。
それから又われ等は、ただある一つの信仰が有力で、他は全部排斥してよいという理由を、何所にも認むることができない。真理は断じて或《あ》る教義教条の独占物ではない。むろん何《いず》れの教義にも真理の種子はある。が、何《いず》れの教義にも誤謬《ごびゅう》の夾雑物《きょうざつぶつ》がある。人間が
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