ありそこに残忍、暴虐、その他人間的悪徳の片鱗をも認むることはできない。神は罪悪がそれ自身の中に刑罰を含むことを知るが故に、常に憐憫《れんびん》の眼もて、すべての人の過誤を見、枉《ま》げられぬ道徳律の許す範囲内に於《おい》て、傷ける者の苦悩を和げようとする。神こそは実に光と愛の中心である。秩序を保つべく、天則の厳守に当らるる神、これがわれ等の崇拝の大目標でなくて何であろう! 神は断じてわれ等の恐怖の対象ではないのである!
われ等は汝等の思索想像する以上に、よく神を知って居る。が、何人もまだ神の姿を拝したものはない。又われ等は形而上的《けいじじょうてき》詭弁家《きべんか》の顰《ひそみ》に倣《なら》って、あまりにも深入りしたる推理|穿鑿《せんさく》に耽《ふけ》ろうともしない。何となれば、そは却って神の根本観念を失わしむるものであることを知るからである。われ等は断じて力量以上の、立入った穿鑿《せんさく》には与《くみ》しない。われ等は心静かに知識の増進を待って居る。汝等も亦《また》それを待たねばならぬ。
神と人との関係につきて、われ等は細説を避けたい。兎角この事につきても、人間の工夫発明にか
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