ばく》もないことになる。くどいようだが、われ等の求むる人物は、敏腕で、熱心で、真理慾が強くて、寡慾で、そして温和しい魂の所有者であらねばならぬのである。人選に骨が折れる筈ではないか。事によると、そうした人選は不可能、と言った方が或《あるい》は適当かも知れぬ。で、止むを得ないから、われ等は多くの中で、一番ましな人物を選び、これに不断の薫陶《くんとう》を加えつつ、曲りなりにも所期の仕事を遂行せんと覚悟するに至ったのである。われ等としては、先《ま》ずつとめて愛と、寛容性とを、その人物に注入すべく心懸《こころが》ける。すると右の人物は、ここに初めて平生の僻見《へきけん》から離脱し、真理が思いの外に多面的、又多角的である所以《ゆえん》を悟って来る。次にわれ等は、右の人物として吸収し得る限りの、多くの知識を注入してやる。一たん知識の土台《どだい》が据えられると、ここに初めて安心して、上部構造物を築くことができて来る。かくの如くして右の人物が、精神的に次第に改造されて行き、どうやらわれ等の所期の目的と調和して行くことになる。
無論|斯《こ》うした仕事に失敗は伴い勝ちで、われ等としても、止むなく中途
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