の懸隔は、これを如何ともするに由《よし》なく、ただ空しく、遠方から淪落《りんらく》の痴漢の暗き行末を、あわれみの眼もて見送るより外に、せん術《すべ》がないのである。
 この種の悪徳の撲滅には、必然的に多大の歳月を要する。何となれば悪は悪を生み罪は罪を孕み、容易にその根絶を期し難いからである。悪徳はただ民族全体の道徳的並に物質的の発達と、高尚な知識の普及と、又《また》真の意義ある教育の進歩とによりてのみ、次第次第に剪除《せんじょ》されて行くのみである。地上の人類が、現在の如《ごと》き非合理的法律を墨守《ぼくしゅ》して居る限り、先《ま》ず改善の見込は絶無であろう。
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問『無邪気な小児は、死後直ちに上界に進むか?』
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 貴重なる地上生活[#「貴重なる地上生活」に白丸傍点]――否、地上生活の経験は、甚《はなは》だ貴重なもので、断じて之《これ》を度外視することはできない。無論小供達には罪穢が少ないから、浄化作用の為めの境涯、所謂練獄の境涯を、迅速に通過することは事実である。が、知識と経験の不足は、之《これ》を死後の教練によりて補充
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