なかに多い。
 例えば社会の治安を目的とする法律にしても、そはあまりに、違反者の制裁にのみ偏する傾向があると思う。法律は懲罰的であると同時に、救治的であらねばならぬ。然《しか》るに現代の法律が、霊媒に対する罰則の如《ごと》きは、何という不合理を極めたものであろう。幽明交通者の中には、勿論《もちろん》良いのも悪いのもある。良いものは、これに保護奨励を与うべきである。悪いものは、これを適当に感化誘導して、正に帰《き》せしむべきである。然《しか》るに何等《なんら》玉石を顧みることなく、霊媒の全部を精神異常者と見做《みな》して、懲罰を加えんとするに至りては、愚にあらずんば正に冒涜である。われわれの側から観れば、かの堕落せる酔漢の類こそ、不良霊媒以上の精神異常者である。彼等が出入する不潔な場所こそは、字義通りの魔窟であって、そこには最劣最悪の不良霊連が、彼等酔漢の躯《からだ》に憑り、鬼畜にひとしき堕落行為に出《い》でしむるのである。これが文明の汚点でなくて何であろう。然《しか》るに現代の法律は、平然として此等《これら》酔漢に対して、一指を染めようとしない。
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