んら》かの効果があるに相違ない。尚お盲目者流の為めにも、彼等の心の眼が、他日立派に開くよう、心から善意の祈願をささげて貰いたい。
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(評釈) 極度に切りつめた抄訳ではあるが、意義だけはほぼ通じることと思う。『永遠の生命』の一節は、説く所《ところ》頗《すこぶ》る簡潔であるが、生命を『向上』と、『黙想』との二段階に分け、われ等の当面の急務として、向上に力点を置くべきを説けるは至極賛成である。かの印度思想にかぶれた者は、ややもすれば、途中の大切な階段を無視して、一躍最後の理想境を求めんとするが、これは百弊《ひゃくへい》ありて一利なしである。何の得る所なき自己陶酔、キザな神様気取りの、聖者気取りの穀潰《ごくつぶ》しが、一人出来上る丈《だけ》である。日本国民は、一時も早くそんな陋態《ろうたい》から蝉脱《せんだつ》して、一歩一歩向上の生きた仕事に従わねばならぬ。
 次に『非命の死と罪悪』の一節は、正に本章の圧巻で、再思三考に値する。人心の悪化、労資の軋轢、世界現状の行詰等を歎息《たんそく》するものは世間に多いが、それ等の中の幾人かが、かかる世相の由《よ》って来る所を、奥深く洞
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