――霊媒能力が種々雑多に分れることは、わざわざ断わるまでもあるまい。或る種の霊媒は、単にその一種特別の体質の為めに選ばれる。つまりそれ等の人達の肉体組織が、外部的客観的の霊的表現を行うに適当しているのである。彼等は精神的には殆《ほとん》ど何等の能力もない。たまたま背後の支配霊達が、何等《なんら》かの通信を行うことはありても、その内容は通例|末梢《まっしょう》的の些事《さじ》にとどまり、時とすれば取るに足らぬ囈語《げいご》やら、とり止めのない出鱈目《でたらめ》やらでさえもある。この種の霊媒は、専ら霊の存在を証明する為めに用いられる。肉眼には見えない他界の居住者が、彼等の肉体を利用して、客観的の現象を作製することができるからである。
 要するにこの種の霊媒は、初歩の心霊現象を作る為めの機関に過ぎない。が、そうかと言って、彼等の仕事がつまらないということにはならない。信仰の基礎工事は、実に彼等によりて築かれるのである。
 それから又一部の霊媒達は、その性質が善良で慈悲深い為めに、霊界の選抜に与《あず》かる彼等は多くの場合に於《おい》て、物理的心霊現象の用具とはなり得ない。又最初は、霊界との意識的の通信さえも為し得ない。が、彼等の素直な性質は、霊的感化を受け易く天使達の監視の下に、その純情が驚くべく開発されて来る。その結果、次第に意識的に、霊界通信を行い得るようにもなり、又|或《あ》る程度の霊視能力を恵まれて、折ふし他界の状況を瞥見《べっけん》することにもなる。彼等の背後に控えて働くのは、通例|或《あ》る情深《なさけぶか》い霊的存在で、印象的に、絶えず必要な指導を与える。斯《こ》うした人達は、いつも愛と平和の清き雰囲気の裡に包まれ、生きては輝かしき人間の模範と仰がれ、死すれば直ちに安息の境地に迎えられて、平和の真光《まひかり》に浴するのである。
 それから又他の霊媒達は、理知的に発達を遂げて居《お》り、知識の拡布《かくふ》、真理の普及に使われる。その背後に控えているのは、皆進歩した霊界居住者達で、或《あるい》はよき思想を送ったり、或《あるい》はよき方法を指示したり、あらゆる手段に訴えて、遺憾《いかん》なく感化影響を及ぼそうとする。霊界の用うる手段たるや、何れも巧妙をきわめ、とても地上の人間には窺知《きち》し得ないところがある。この際霊界人にとりて、何より困難を感ずるのは適当
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