察して世界平和の大計を講ずる資格があるであろうか。霊界の先覚から、『盲目なる哉《かな》地上の人類』と一喝されても、まことに致方がないように思われる。二十世紀の現代には、改善すべきものが尚お無数にある。獄舎制度も面白くないが、教育制度も甚《はなは》だ面白くない。まるきり心霊の知識を欠ける人類は半盲人である。到底|碌《ろく》な考えの浮ぶ筈がない。私は衷心《ちゅうしん》から、日本国民よ、何所《どこ》に行くと叫びたい。
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第三章 幽明間の交渉
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問『前回の通信を草した時、自分は非常に疲労を覚え、脳の底部に激痛を感じた。その原因は何であったか?』
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現代立法の不備[#「現代立法の不備」に白丸傍点]――汝《なんじ》が頭痛を覚えたのは、畢竟《ひっきょう》われ等が、あまりに多量の力を用い、しかもそれが、あまりに急激に行われたことに基因する。あのような重大問題を論ずるに当りては、われ等とても、勢い多少の昂奮《こうふん》を免れない。天授の神律《しんりつ》に対する絶対服従の必要を、地上の人類に強調せんとする時、うっかり霊媒の体躯《たいく》に対する顧慮を失い、図らずも汝《なんじ》に苦痛を与えることになった。今度はつとめて心の平静を保つよう注意を怠らぬであろう。
さるにても、戦慄すべきは戦争の惨禍である。戦争なるものは欲望、野心、又《また》復讐的激情の所産である。そして其《その》結果は如何《いかん》? 麗わしき神の御業《みわざ》は、無残にも脚下に蹂躙《じゅうりん》せられ、人間が額に汗して築き上げたる平和の結晶は、一朝にして見る影もなく掃滅せられ、夫婦骨肉の聖《きよ》き羈《きずな》は断たれ、幾千幾万の家族は、相率いて不幸の谷底に蹴落され、大地の上は、至る所に屍《しかばね》の山を築く。しかも無理にその肉体からもぎ離されたる無数の魂は、何の用意も、教育も施されずに、汚水の如く霊の世界へとなだれ込む。その罪穢、その腐敗は、まさに言語に絶し、万《よろず》の災厄《わざわい》は、すべてここに萌《きざ》すのである。地上の人類が、もう少し這間の事情に通ぜぬ限り、文化の発達は到底遅々たるを免れない。
どう考えても、現代の社会政策、国家政策には廃棄を要するものと、補修を要するものとがなか
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