Ombra di Venezia
堀辰雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)曙光《モルゲンレエテ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
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きのふからギイ・ド・プウルタレスの「伊太利に在りし日のニイチェ」といふ本を讀み出してゐる。忠實な傳記ではないかも知れないけれど、なかなか面白い。いま讀んでゐるところは、ニイチェが三十六七の時、獨逸を去つてはじめて伊太利に赴き、先づ最初ヴェネチアに滯在してゐた頃(一八八〇年三月―六月)の有樣を敍した一章であるが、ここに描かれてゐるニイチェの姿には、これまであまりにも屡※[#二の字点、1−2−22]ニイチェといふ名の下に描かれてゐるディオニソス的な人間とはかなり相違した、ずつと我々には親しみ深く思はれるものがある。私はさういふヴェネチアにおけるニイチェの姿をプウルタレスから少し抄して見よう。――
ヴェネチアでは、ニイチェは、あるバロック式の古い館の、大理石を敷きつめた大きな室の中に
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