燃ゆる頬
堀辰雄
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蜂《はち》の巣
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)彼|等《ら》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]
−−
私は十七になった。そして中学校から高等学校へはいったばかりの時分であった。
私の両親は、私が彼|等《ら》の許《もと》であんまり神経質に育つことを恐れて、私をそこの寄宿舎に入れた。そういう環境の変化は、私の性格にいちじるしい影響を与えずにはおかなかった。それによって、私の少年時からの脱皮は、気味悪いまでに促されつつあった。
寄宿舎は、あたかも蜂《はち》の巣のように、いくつもの小さい部屋に分れていた。そしてその一つ一つの部屋には、それぞれ十人余りの生徒等が一しょくたに生きていた。それに部屋とは云うものの、中にはただ、穴だらけの、大きな卓《つくえ》が二つ三つ置いてあるきりだった。そしてその卓の上には誰のものともつかず、白筋のはいった
次へ
全19ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
堀 辰雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング