たら、おもいがけず吹雪に遭いました。……」
 僕は木曾の宿屋で貰った絵はがきにそんなことを書きながら、汽車の窓から猛烈に雪のふっている木曾の谷々へたえず目をやっていた。
 春のなかばだというのに、これはまたひどい荒れようだ。その寒いったらない。おまけに、車内には僕たちの外には、一しょに木曾からのりこんだ、どこか湯治にでも出かけるところらしい、商人風の夫婦づれと、もうひとり厚ぼったい冬外套《ふゆがいとう》をきた男の客がいるっきり。――でも、上松《あげまつ》を過ぎる頃から、急に雪のいきおいが衰えだし、どうかするとぱあっと薄日のようなものが車内にもさしこんでくるようになった。どうせ、こんなばかばかしい寒さは此処いらだけと我慢していたが、みんな、その日ざしを慕うように、向うがわの座席に変わった。妻もとうとう読みさしの本だけもってそちら側に移っていった。僕だけ、まだときどき思い出したように雪が紛々と散っている木曾の谷や川へたえず目をやりながら、こちらの窓ぎわに強情にがんばっていた。……
 どうも、こんどの旅は最初から天候の具合が奇妙だ。悪いといってしまえばそれまでだが、いいとおもえば本当に具合よ
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