おもわず小さく叫んだ。「あの首のうなだれ方までそっくりだな。」
「セガンティニは僕はあの倉敷の美術館にあるのしか知らないな。」
M君は僕の言葉をそのまま受けいれるにはすこし自信がなさそうだ。
「そりあ知らないといえば、僕だってなんにも知らないようなものだがね、ただまあひょいとそんな聯想《れんそう》がうかんだんだ。」僕の方でもそんな云いわけをした。「そういえば、あそこにもアルプスの絵かなんかあったね。あれはどんな絵だったかな?」
「たしか真昼の牧場の絵で、アルプスが遠く見え、前のほうに羊飼いの女の立っているような構図だったとおもいますが。……」
「ああ、それで思い出した。なんだかこう妙にねじくれた白樺の木にその女がもたれているんだろう。……」僕はそこの美術館ではエル・グレコの絵しか見て来なかったような気がしていたが、セガンティニのような特異な絵はやはり注意して見ていたものと見える。さっき草原に立った木をなつかしそうに見ながら、何かいまにも思い出せそうでまだ思い出せずにいるものが、その殆ど忘れかけていたセガンティニの絵に描かれた白樺の木とも何か関係のありそうなことをふいと感じた。だが、そ
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