だ、それからゲエテも讀まう。私は自分の跡にどんなジグザグな線が殘るか知らないが、ともかくもこの二つの相異つた精神について行つてやらう。その一方が詩に對する私のやや性急な愛をもつと平靜な愛[#「平靜な愛」に傍点]に變へてくれるだらうならば、また一方は*、私のこれまで殆ど打棄らかしておいた自己の考へへの誠實[#「自己の考へへの誠實」に傍点]を養つてくれるだらう。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
* プルウストのなげやりな混雜した文體は私の簡潔な文體への好みを困らせる。しかしそれはガボリイも言ふやうに、彼の美徳――誠實であること[#「誠實であること」に傍点]の結果であるやうに見える。私は今までのなまじつかな簡潔さよりも、さう云ふ誠實な混亂[#「誠實な混亂」に傍点]を欲しいのだ。
[#ここで字下げ終わり]

          ※[#アステリズム、1−12−94]

 私がその秋のはじめに讀んだジョルジュ・ガボリイの「マルセル・プルウストに就いてのエッセイ」は、彼の内部に眠つてゐたものがプルウストによつて呼び醒まされた過程を精しく語つてゐて、面白い。
 プルウストの死んだのはある冬
前へ 次へ
全24ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
堀 辰雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング