雪の上の足跡
堀辰雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)獣《けだもの》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)茶屋|旅籠《はたご》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]
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高原の古駅における、二月の夕方の対話
主 やあ、どこへ行ったかと思ったら、雪だらけになって帰って来たね。
学生 林の中を歩いて来ました。雑木林の中なぞは随分雪が深いのですね。どうかすると、腰のあたりまで雪の中に埋まってしまいます。獣《けだもの》の足跡が一めんについているので、そんな上なら大丈夫かとおもって、足を踏みこむと、その下が藪《やぶ》になっていたりして、飛んだ目に逢ったりしました。
主 君と、兎なんぞが一しょになるものかね。それに、もういくぶん春めいて来ているから、凍雪《しみゆき》もゆるんで来ているのだろう。だが、そうやって雪の中が歩けてきたら、さぞ好い気もちだろうなあ。
学生 ええ、実に愉快でした。歩き
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