の目がそれを引き延ばさずには居られない、見え難い、不思議な線の正確な出發點であり、暗闇の中のスクリインの上に完全な姿となつて投影されてゐるスペクトルのやうな、その婦人のまはりでぴちぴち跳つてゐる線のおのづからなる塊りであつた。
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[#地から2字上げ]「ゲルマントの方」※[#ローマ数字1、1−13−21]
さういふ、われわれの目がそれから現實的《レアル》な線を引き延ばさずにはゐられないやうな、不思議な、見え難い線、そこにこそ、プルウストの目のみならず、彼の精神が絶えず追究してゐたところの實驗があるのだ、とシャルル・デュ・ボスは説いてゐるのである。
※[#アステリズム、1−12−94]
なんだかすこし尻切蜻蛉のやうだが、ここいらで一度ペンを置く。が、僕は君にもつともつとしやべりたいことがあるのだ。僕はプルウストに關する著書が後から後からと出るのに驚いてゐたものだが、この調子なら僕にもそのうち一册の書物位は書けさうな氣がする。が、今日はもうへとへとに疲れた。當分僕のプルウスト熱はさめさうもないから、どうぞ次の僕の手紙を待つてゐて呉れたまへ
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