トも私は一月ばかりプルウストを讀んでゐた。このごろの私にとつてはこの此類のない作家が彼獨自の新しい方法で絶えず人生の姿を明らかにしてゆく――その見事な過程のみならず、そこに漸次見出されてゆく人生の業苦のやうなものがひしひし胸に迫つて來るのである。いまの私はさういふプルウストについてこそ語りたい。――しかし、いまだ機會を得ず、此處にはこの舊稿をその儘載せておくことにした。(昭和十八年十二月記)
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底本:「堀辰雄作品集第五卷」筑摩書房
1982(昭和57)年9月30日初版第1刷発行
初出:「日本現代文章講座 鑑賞篇」厚生閣
1934(昭和9)年5月19日
※初出時の表題は「マルセル・プルウストの文章」、「狐の手套」野田書房(1936(昭和11)年3月20日)収録時「プルウストの文体について」と改題、「曠野」養徳社(1944(昭和19)年9月20日)収録時「リラの花など――プルウストの文体について」と改題、「堀辰雄作品集第二・美しい村」角川書店(1948(昭和23)年10月30日)収録時「リラの花など」と改題
入力:tatsuki
校正:染川隆俊
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