あまりな出来事に心が擾《みだ》れて、そういう頭の君に対する思いがけない程のはげしい憤りやら、自分のした事に対する悔いやらを感ぜずにはいられなかったが、漸《ようや》くいつもの落着いた自分に立ち返った今はもう、何やら自分でもわけの分からぬ身の切なさを除いては、私の気もちも割合に静かになっている。
 女房たちはそんな私に向って言うのだった。「もう御約束の日も間近かになっておりましたのに、あれほど御執心なすって入らしった姫君を措《お》いて、あの方とした事が、まあ何んという事をなすったのでございましょうね。本当にあまりといえばあんまりな……」私はそういう人々のおなじ繰り返しのような慰めの言葉はどうも無関心に聞き流しているよりしようがなかった。
 が、そういう頭の君のこんどの唐突な振舞も、少くともいまの私にだけは、そうなさるべくあの方を余儀なくせしめたようなお心の動きの全然分からない事もないような気がする。否、むしろ、もう殆ど手に入れられるばかりになっていた撫子をいつまでもあの方に限りなく遠いところにあるかのように思わせ、あの方のお気もちをわざと焦《じ》らし抜いて、御自分で御自分がもう何を欲してい
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