いような事情になりまして……」
「それは又、どうなすったのですか?」頭の君は心もち縁からいざり寄られた。
これはまだ言うのではなかった、と思ったけれど、私はすぐ又、そう、いっそ此事は早くお知らせしておいた方がよくはないかしら、とも思い直して見るのだった。しかし自分の口からはさすがに言い出しにくいので、その殿から寄こされた御文をそのまま、頭の君にお見せしたくないところだけ破り取って、「これを御覧なすって下さいまし。御目にかけてもしようのないものですけれど、まあ、これで殿に催促しにくい訣《わけ》がお分かりになるでしょうから――」と言いながら、簾の下から差し出した。
頭の君はそれを手にせられると、ずうっと縁の先まで滑り出して往かれて、微《かす》かに差している月あかりにすかしながら、それをいつまでも見入っていられた。
そうやってながいこと見て入らしった後、頭の君は何やら口籠りながらそれを簾の下から、こちらへ差し入れられた。それから漸《や》っと聞えるか聞えないほどの声で、「御料紙の色さえわかり兼ねます位で、折角ながら何んとも読めませんでした」と言って、再び縁の方へすさって往かれた。
私は
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