さすがに胸が一ぱいになって来、いそいで筆を走らせて、「まあ、そんな恐ろしい事を仰ゃるものではありません。あなた様がお怨みなさるべきは、この私ではないではありませんか。山のことも一向不案内なわたくし、まして谷のことなどは――」と認めて、すぐ持たせてやった。
 それから暫くして、頭の君はいつものように道綱と一つ車で、役所に出かけて往ったようだった。
 その夕方、頭の君は再び道綱と同車して帰って来られた。そうして私のところへ又、何かお認めになって寄こされた。こんどは見違えるばかり鮮な手跡で、「けさほどはたいへん取り乱した事を申し上げて恐れ入りました。仰せ下さいました事、しみじみ胸に沁《し》みました。私はきょうは本当に生れ変ったような気がいたしております。これからは、もっと気をしっかりと持って、殿の仰せどおりにお待ちいたす決心をいたしました。只、それまでは他に何んのなす事もなく、無聊《ぶりょう》でありまする故、どうぞ縁の端にでもおりおり坐らせて置いて下さいませんか」と書かれていた。
 まあ、そう急に神妙なお気もちになられたってそれがいつまで続くことやら。そうも思われたものだから、ともかくも今後
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