うなものがありますね」と言つて居りました
 クロオデルの Ode のもつ、あの汲めども汲めども盡きずに滾々と涌きあがつてくるやうな詩句の豐かさは、無限なるもの――「神」のうちにその源泉があるからでありませうが、それと等しいことが「古代感愛集」の諸篇のもつ神さびた感じ、その詩句の重量感、ことに長篇の詩のあふれるばかりに充實した感じなどに對しても言へるやうに思へます
 さうしてさういふさまざまな感じが相俟つつて、私には、この書物が私たちの持ち得た唯一の宗教的な詩集として貴重なものに思へさへいたします(「古代感愛集」の宗教的な感じの源泉を深く究めることは私たちに課せられた大きな問題のひとつとなることでせう 少くとも私はこれから自分のすべき研究の一つの方向をそのはうへ向けて行く決心でゐます)
「古びとの島」などの南の海のなかの小さな島にいまも殘つてゐる古代の姿のかそけさ、「足柄うた」などの浪漫的な稀有な美しさ、また「幼き春」などの幼時思慕篇の鏡花のそれを思はせるばかりのなつかしさ、――さういふ諸篇のそれぞれの美しさに、讀む度毎に、感動を新たにいたしてをりますが、就中、「乞丐相」のアイロニイのき
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