予見し得ると私は確信しないのであるからして、私はまずこれらの省察において、私がそれによって真理の確実な明証的な認識に到達したと思われるところの同一の思惟の作用を開陳し、もって私が説得せられたのと同じ根拠によっておそらく私は他の人々をも説得し得るかどうかを知りたいと思う。そして、かくして後、これらの省察を印刷に附せられる前に検討してもらうために送った幾人かの智能と学識とによってすぐれた人々の駁論に対して答えるであろう。というのは、この人々によってなされた駁論は十分に数多くまた種々様々であるので、そこにすでに触れられていない、少くとも或る重要な、他の駁論が容易に何人の心にも浮かばないであろう、と私は敢えて期待するのである。そしてかるがゆえに、私は読者に、右のすべての駁論及びこれに対する弁明を通読する労力をとられない以前に、この省察について判断を下されないように、繰り返しお願いする。
[#改丁]

     以下の六省察の概要

 第一省察においては、いかなるわけで我々はすべてのもの、とりわけ物質的なものについて、少くとも我々がこれまで有したものよりほかの、もろもろの学問の基礎を有しない間は、疑うことができるかの理由が示される。かような全般的な懐疑の効用は初手には明かではないとはいえ、しかしそれはあらゆる先入見から我々を解放し、精神を感覚から引き離すに最も容易な道を用意し、そして最後に、我々がかくして後に真であると理解したことについてもはや疑い得ないようにするという点において、その効用は極めて大きいのである。
 第二省察においては、自己の有する自由を使用する精神は、その存在について極めて少しでも疑い得る一切は存在しないと仮定するが、自身はしかし存在せざるを得ないことに気づくのである。そのことはまた、このようにして、自己に、すなわち思惟する本性に属するものと、身体に属するものとを容易に区別するからして、極めて大きな効用を有している。しかしおそらく或る者は、その箇所において霊魂の不死についての根拠を期待するであろうから、ここで彼等に告げておかねばならぬと思う、私は厳密に論証しない何物も書かないことに努めたので、幾何学者たちの間で慣用せられている順序、すなわち何かを結論する前に、求められた命題が依繁する一切を前もって提論するという順序よりほかの順序に従うことができなかった、と。しかるに霊魂の不死をよく認識するために前もって要求せられる第一の何より重要なことがらは、霊魂についてできるだけ分明な、そして身体のあらゆる概念からまったく区別せられた概念を作るということである。これはそこでなされている。しかしそのほかに、我々が明晰に判明に理解する一切は、我々がそれを理解する通りに、真であるということを知ることがまた要求せられるのである。これは第四省察以前には証明せられることができなかった。さらに、物体的本性の判明な概念を有しなければならないのであって、かかる概念は一部分この第二省察において、また一部分は第五及び第六省察において作られている。なおまたこれら一切のことから、精神と身体とがまさにそのように把握せられるごとく、別個の実体として明晰に判明に把握せられるものは、全く実在的に互に区別せられた実体であることが結論せられねばならないのである。そしてこれは第六省察においてその通り結論せられている。これはしかも、同じ第六省察において、我々はいかなる物体も可分的としてでなければ理解せず、反対にいかなる精神も不可分的としてでなければ理解しないということによって、確かめられている。すなわち我々はどのように小さい物体でもその半分を考えることはできるが、いかなる精神についてもその半分を考えることはできぬ。かようにして両者の本性は単に別であるのみでなく、また或る点で相反することが認められる。しかしながらこのことについてはこの書物の中ではそれ以上立ち入って論じなかった。というのは、一方それだけで、身体の消滅から精神の死が帰結しないことを示し、そしてかようにして人間に来世の生の希望を与えるには、十分であるからであり、他方またこの精神の不死を結論し得るもろもろの前提はあらゆる自然学からの説明に依繁しているからである。すなわちまず、およそあらゆる実体、詳しく言うと、存在するためには神によって創造せられねばならぬものは、自己の本性上不滅であり、その同じ神によって、そのものに神の協力が拒まれることによって、無に帰せしめられるのでなければ、決してあることをやめ得ないということが知られねばならぬ。そして次に、一般的に見られた物体は実体であり、それがために決してまた滅びないということ、しかし人間[#「人間」は底本では「人問」]の身体は、余の物体と異なる限り、ただ単にもろもろの器官の或
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