しましたけれど、利目がございませんでした。
ノラ あいつ、歸らないつていふのかい?
エレン はい、あなたにお話のすむまでは歸らないと申してをります。
ノラ ぢやお通し! 靜かにね! それからあいつの來たことをいつちやいけないよ。旦那樣に聞えるとびつくりするからね。
エレン はい承知いたしました。(出て行く)
ノラ 來た來た、たうとう近よつてきた。いや、いや、そんなことがあるものか、そんなことをさせやしない!
[#ここから3字下げ]
(ノラは、ヘルマーの室の處に行き、指錠をおろす。エレンは廊下への扉を開きクログスタットを通す。そして後を閉め切る。クログスタットは旅行上衣を着、長靴をはき、毛皮の鳥打帽子を冠つてゐる)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
ノラ 靜かにお話下さい、主人が家にをりますから。
クログスタット 承知しました。そんなことはどうでもかまひません。
ノラ どんな御用ですか?
クログスタット 少しお知らせ申すことがありましてね。
ノラ ぢや早くして下さい、何ですか?
クログスタット ご承知かも知れませんが、私は免職になりました。
ノラ そ
前へ 次へ
全147ページ中86ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
イプセン ヘンリック の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング