主人は少しも私をご存じなかつたでせう? それでどうしてランク先生が――?
ノラ あ、それはランク先生のいふ通りですの。クリスチナさん。全體トル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ルトが私を愛してることといつたら一通りや二通りぢやないんですからね、私の體を全く自分の物にしきらないと承知しないの、いつも自分でさういつてるのよ。ですから結婚した當座なんか、私が里にゐる頃親しくしてゐた人の名でもいはうものなら、もうすぐ妬きもちをやくのですよ。そんな風で自然にさうしたことをいはないやうにして置いたのですけれどね、ランク先生にはよく昔のことなんか話しましたのよ、あの方はそんなことを聞くのが大變好きなものだから。
リンデン ですけれどねえ、ノラさん、あなたはまだ、どうしてもねんねえよ。私あなたよりは年も上だし、經驗も幾らか餘計に積んでるからいひますがね、あなたはランク先生との關係を、きちんとしておく必要がありますよ。
ノラ どんな關係?
リンデン あなたは昨日、金持であなたを崇拜してる人にお金を拵へて貰ふといつたでせう?――
ノラ えゝ、實際はゐない人にねえ、お氣の毒さま、それがどうしました?
リ
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