ンデン ランク先生はお金を持つてるの?
ノラ えゝ、持つてます。
リンデン そして、遺産相續といつては、誰もゐないでせう?
ノラ 誰もゐません。だけれど――
リンデン それで以て、あの人は毎日この家へ來るんでせう?
ノラ えゝ、毎日。
リンデン 私は、あの人がもう少し嗜みを持つててくれるといゝと思ひます。
ノラ 私まだあなたのおつしやる意味がわからない。
リンデン 白ばくれちやいけませんよ、ノラさん。あなたまだ千二百ターレルのお金をあなたに貸した人が、誰だか私に當てがつかないと思つてるの?
ノラ はゝはゝ、どうかしてるわ、あなた、さういふ考へでゐたのですね。毎日家へ來るお友達から借金をするなんて! どんなに氣まづいだらう。
リンデン ぢやあ本當にあの人ぢやないの?
ノラ えゝ本當に。そんなことは今まで考へて見たこともありません――それにあの頃はまだ、あの方には人に貸すやうなお金は無かつたのですよ。財産の手に入つたのは後の事なの。
リンデン まあ、その方があなたのためにはよかつたと思ひます。
ノラ 全く私、ランク先生のことなんぞは考へても見なかつたのだけれど、もしあの方に頼んだらきつと―
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