があれば、どんなことでも起つてきます。
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(ノラは、外出仕度の物と小さい旅行鞄を持つて出てきて、それを椅子の上に置く)
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ヘルマー ノラ、ノラ、今でなく明日まで待つてくれ。
ノラ (外套を着ながら)他人の家に寢ることは出來ません。
ヘルマー けれども、兄と妹のつもりで住つては行けなからうか?
ノラ (帽子を冠りながら)そんなことが長續きするものでないのはわかつてゐませう。あなた、左樣なら、いゝえ、子供の方には行きません。あれ達は私が世話をするよりも却つてよく世話して貰つてゐます。今の私の身では、子供達に何の役にも立ちません。
ヘルマー しかしいつかは、ノラ、いつかは――
ノラ そんなことがどうしてわかりませう。私は自分がこれからどうなることやら、少しもわかつてはゐません。
ヘルマー (大聲でわめく)だが、お前はいつまでも私の妻だ。
ノラ あなた、よく聞いておいて下さい。とにかく私にあなたの義務をすつかり無くして下さいますなら、私が自由なのと同じに、あなたも自由にして下さい。お互に少しも制限を置か
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