れでもう、私のすることはわかりました、叱ッ!
ヘルマー (歸つてくる)そこで奧さん、見てやつて下さいましたか?
リンデン えゝ、ぢや私はもうお暇申しませう。
ヘルマー え? もうですか? この編物はあなたのですか?
リンデン (それを取る)えゝ、どうも有難う、私、餘程忘れるところでしたよ。
ヘルマー ぢや、あなたは編物をなさるのですね。
リンデン えゝ。
ヘルマー それよりか刺繍《ぬひとり》をなさる方がいゝでせう。
リンデン さうですか? どうしてゞせう?
ヘルマー なぜといつて、その方がずつと綺麗です。ご覽なさい、刺繍の時には左の手にそれを持つて、さう、そして右の手を長いなだらかな曲線にして針を動かす、さうぢやありませんか?
リンデン えゝさう。
ヘルマー けれども編物となると、どうも見|惡《にく》い。ま、ご覽なさい――兩腕を脇腹にくつつけて、そして針が上にいつたり下にいつたり――その樣子が何だか支那人のやうですね――時に今夜のシャンペンは實際素的だつたな。
リンデン ぢや、お休み遊ばせ。ノラさん、もう剛情を張つちやいけませんよ。
ヘルマー よくいつて下すつた、奧さん――
リンデン 
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