あなた、お休み遊ばせ。
ヘルマー (戸の處までリンデン夫人と一緒に行きながら)お休みなさい。氣をつけてお出でなさいよ。お送り申すといゝんだが――實際すぐそばですからね、さようなら、お休みなさい!(リンデン夫人去る。ヘルマーは後の戸を閉めて再び出てくる)やつと、あの女を歸しちやつた。全く氣のきかないやつだよ。
ノラ あなた、大變疲れてはをりませんか?
ヘルマー いや、ちつとも。
ノラ 眠くなくつて?
ヘルマー 少しも眠くない。それどころか非常に愉快だね。が、お前は? 疲れて眠さうにみえるな。
ノラ えゝ、非常に疲れちやつた。もう直ぐ寢ませう。
ヘルマー そらご覽! 早く連れて歸つてよかつただらう。
ノラ それは、あなたのなさることなら何でも本當ですよ。
ヘルマー (女の額に接吻しながら)それで、家の雲雀が大人しくなりました。お前、ランクが非常に愉快さうだつたのに氣がついてゐたかい?
ノラ さうでしたか? 私あの人と話をする折がまるでなかつたのですよ。
ヘルマー 私だつてあまり話はしなかつたがね、しかしあの男があんなに上機嫌なことは、めつたに見たことがないよ(暫らくノラの方を見て、傍へよつ
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