クログスタット では、あなたは實際? 全體あなたは私の過去を知つてますか?
リンデン えゝ。
クログスタット そして世間の奴が私をどういつてるか、それも知つてますか?
リンデン ですけど、あなたは今、私と一緒だつたらまるで別な人になつてゐたらうとおつしやるやうなお口吻だつたぢやありませんか。
クログスタット それは確かにさうだ。
リンデン 今ではもう遲くつて?
クログスタット クリスチナ、あなたは自分で今何をいつてるか、知つてゐますか、あゝ、知つてゐるにちがひない。あなたの顏はさういつてゐる。ほんたうにあなたは、その勇氣を持つてゐるのか――?
リンデン 私には頼る男が要るし、あなたの子供には母が要るでせう? あなたには、私といふものが必要だし、私には――私にはあなたが必要です。ねえあなた、私はあなたの立派な本當の心を頼りにしますよ。あなたと一緒なら私は何にも怖いものはありません。
クログスタット (女の手を取りながら)有難う――(立つ)有難うクリスチナ、これから一つあなたが見てくれた本當の私に立ち戻つて世間の奴を見返してやるよ。あ、私は忘れてゐた――
リンデン (聞耳を立てながら)
前へ 次へ
全147ページ中109ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
イプセン ヘンリック の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング