叱ッ! タランテラよ、早くお歸んなさいよ。
クログスタット どうして? どうしろといふんだ?
リンデン 上で踊つてるのが聞えませんか? あれが濟むと、直ぐここの人達が歸つてくるでせうよ。
クログスタット わかつた、わかつた。歸らう。だが今となつてはもう手遲れだよ。私がこのヘルマーの家に對してやりかけてゐることが、どんなことだか無論お前は知るまいが。
リンデン いゝえ、知つてゐます。
クログスタット クリスチナ、それでもあなたは、あゝいふことをする勇氣が――
リンデン それはね、あなただつて絶望すれば、どんなことでもやらうとするでせう? それは私察してゐますよ。
クログスタット あゝ、どうかして取消すことが出來るといゝがな。
リンデン 出來ます――あなたの手紙はまだ郵便受の中にあります。
クログスタット たしかに?
リンデン えゝ、けれどもね――
クログスタット (探るやうな目付で女を見ながら)あはあ! わかつた。あなたは、どんなことをしてゞもあなたの友人を救はうといふ腹なんだな。いつておしまひ――それがあなたの本心なのかい?
リンデン あなた、女は一度他人に身を賣れば、二度とそんなこと
前へ 次へ
全147ページ中110ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
イプセン ヘンリック の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング