》ふと告《つ》げたりと夢《ゆめ》む。痴人《ちじん》夢《ゆめ》を説《と》く、されど夢《ゆめ》を見《み》て自《みづか》ら悟《さと》るは必《かなら》ずしも痴人《ちじん》にあらざる可《べ》し。余《よ》は現今《げんこん》に於《おい》ても、將《は》た未來《みらい》に於《おい》ても、七福《しちふく》の來《きた》る可《べ》きを信《しん》ずる能《あた》はず。されど余《よ》が現状《げんじやう》を顧《かへり》みれば、既《すで》に七福《しちふく》を得《え》たるにはあらざるかと思《おも》ふ。
一 災害《さいがい》に遇《あ》ふも驚《おどろ》かず。
二 患難《くわんなん》に向《むか》ふとも悲《かなし》まず。
三 貧《まづ》しけれども餓《う》ゑず。
四 老《おい》て勞《らう》を厭《いと》はず。
五 衣《ころも》薄《うす》くも寒《さむ》からず。
六 粗食《そしよく》にも味《あぢ》あり。
七 雨漏《あまも》りにも眠《ねむり》を妨《さまた》げず。
此等《これら》の七福《しちふく》を余《よ》は悉《こと/″\》く灌水《くわんすゐ》の徳《とく》に歸《き》するものなり。
友人《いうじん》松井通昭《まつゐつうせう》氏《し》吾《わが》七福《しちふく》を詠《えい》ずるの歌《うた》を寄《よ》せらる。左《さ》に録《ろく》するもの此《これ》なり。
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一 災害《さいがい》に遇《あ》ふとも驚《おどろ》かず
災《わざはひ》の起《おこ》れる本《もと》を知《し》る人《ひと》は
驚《おどろ》きもせずはた悲《かなしみ》もせず
二 患難《くわんなん》に向《むか》ふとも悲《かなし》まず
憂《う》きつらき重《かさ》ねかさねて今《いま》は世《よ》に
かゝるものなき身《み》こそ安《やす》けれ
三 貧《まづ》しけれども飢《う》ゑず
雲《くも》に似《に》たる富《とみ》を何《なに》せんあはれ世《よ》の
人《ひと》もかくこそあらまほしけれ
四 老《おい》て勞《らう》を厭《いと》はず
宜《うべ》なりやかくありてこそ人《ひと》として
世《よ》に生《うまれ》つる甲斐《かひ》はありけれ
五 衣《ころも》薄《うす》くも寒《さむ》からず
此《この》心《こゝろ》あらずばいかに雪《ゆき》深《ふか》き
十勝《とかち》の荒野《あらの》住家《すみか》定《さだ》めん
六 粗食《そしよ
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