に牧塲を設置し、塲内に農家を移し、力行《りょっこう》自ら持し、仁愛人を助くることを特色とし、永遠の基礎を確定したる農牧村落を興し、以て此れに勤倹平和なる家庭と社会とを造らん事を期せり。コレ実に迂老《うろう》が至願《しがん》なりとす。迂老は幼にして貧、長じて医を学び、紀伊国《きいのくに》濱口梧陵翁《はまぐちごりょうおう》の愛護を受け、幸に一家を興すことを得たりと雖《いえども》、僅に一家を維持し得たるのみにして、世の救済については一毫《いちごう》も貢献する所なし。今に至り初めて大に悟る所あり。自ら顧《かえりみ》るときは不徳|※[#「菲/一」、226−2]才《ひさい》事《こと》志《こころざし》と違《たが》うこと多しと雖、而《しか》も寸善を積みて止まざるときは、何《いず》れの日|乎《か》必成《ひっせい》の期あるべきを信ずる事深し。乃《すなわ》ち先ずコレを我牧農の小村落に実施し、延《ひ》いて他に及ぼさんことを期し、コレを積善社と名づく。凡《およ》そ我社中の人には、労苦を甘んじ、費用を節し、日々若干金を貯えて、コレを共同の救済集金とし、以て社中に安心を与え、上《かみ》は国恩を感謝し、祖先の神霊を慰
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