る時は、忽ち胃痛を発し嘔吐下痢する事ありて、総体に於ける衰弱するを覚えたり。乍去《さりながら》強《しい》て注意して運動を怠らず、更に喰料にも成丈|軟《やわらか》きものを選み、且つ量に於ても三分一を※[#「冫+咸」、221−2]ずるとして、夕飯は必ず後四時として粥を用い、菜は淡泊なるものを用うるとせり。此れにて次第に平均を得るも、尚注意して漸次に復常を得たり。然るに他処に出《いず》る時は、余儀無く喰するの時を過《あやま》り、或は硬き飯及び不消化物を食する時は、胃痛下痢を発するには殆んど困却せり。依て一日《いちじつ》の旅行には弁当を携え、一泊する時は前以て粥と時間を早くするとを頼むとして、注意を怠らざるのみ。依て次第に心身共に復常するを得たり。アア老境は実にアワレなり。依て世上の壮年者に忠告す。人たる者は必ずや盛衰の範囲を脱する事能わず。夫れ発育期を経て成熟期に至れば、続いて老衰期の来《きた》るを能く銘記せよ。老人たるや肉喰と絹服《けんふく》とにあらずんば養うに足らずとは、古きより訓《おしえ》たり。実に然り。喰物は歯にて噛む事能わず。着類も重きに耐えざるなり。故に壮年者は老人に対するの責任
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