したり。然るに予は帰着後未だ草鞋ばきの儘なるも、其実况を見るに実に如何とも致すべからざる事たりしにて、予も同く大落胆するのみ、且つ言うべからざるの感に打れたり。然るに予は大に决する処あり、予が共に沈衰するに至らば如何なる塲合に陥らんか、依て今後に於ける如何なる事あるも、現状を回復するには大奮起せざるに於ては、我が牧塲は忽ち瓦解に帰せんや必せりと悟りて、一同に向い大声を以て第一に片山を呼び、其他を集めて叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]して曰く、我牧塲の現状を恐るる者あらば、直《ただち》に我牧塲を立退けよ、とて大に怒鳴りて衆に告げたり。且つ曰く、予は生活する間は决して此牧塲を退かざるなり、予は生活する間はココを退かずして、仮令《たとえ》一人にても止まりて牛馬の全斃を待つ。尚語を継ぎ曰く、全斃の後に至り斃馬の霊を弔わんと欲するなり、若《も》し幸にして一頭にても残るあらば後栄の方法を設くべし、我等夫婦が素願を貫くの道なりと信じて動かざるなり、幸にして種牡馬《たねうま》二頭は無事なり、依て此上に病馬あらば、十分に加療を施して死に至らしむるこそ、馬匹に対するの大義務たるべきなり、予は老
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