ち》に至り漸く丸木舟にて渡すとて川向に着す。川には流材多く危険にして、泥水と腐草とは舟を妨げる事ありしなり。然るに藻岩村に行くの道路に向うて僅に四五十間行くに、昨日迄の洪水は去れども、瀦水《ちょすい》は膝を浸す。尚行くに従うて深きが如し。依て渡人《わたしびと》なる土人に其詳細を聴くに、道路は深くして腰を浸すべし、強《しい》て藻岩に行くには堤防を行き、夫より畑の中を通り、遥に見ゆる処の小屋に至り、夫れより間道を通らば藻岩に至ると。依て土人を傭《やとう》て、助けられて行くとせり。然るに泥水とゴミと流れ、木材多く、歩行困難にして或は倒れんとする事あり。依て土人に手をひかれて歩するに、深さ膝を過ぎ、泥水中に朽木《くちき》を踏みて既に危く倒れんと欲するあり。或は大《おおい》なる流材ありて、此れを跨《またが》りて越えるあり。或は畑の溝にて深き所ありて股を浸すあり。故に一歩毎に危く、片手は土人にひかれ、片手には倒れ木を握り、或は蝙蝠傘を杖として歩行するが為めに、胸迄泥水に浸されて、僅に脊負う所の風呂敷を浸さざるのみ。為めに或は立ながら休み、或は泥水中に倒れ木によりて休みて、数回倒れんとしたるを遁るる
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