来りて、諸共に、幾千代かけて駒を守らん。
秋の夜の、俤《おもかげ》うつる夢さめて、ねやにただきく川風の音。
[#ここで字下げ終わり]
廿九日、餘作来塲して予を慰む。
寛は亡妻の病めるや既に不治にして必死たるべきを决定するを以て、死去後には憂いとは思わざるのみならず、亦忘れんと欲するも、如何《いかん》せん精神上に於ける言うべからざるの欝を以てし、且つ全身は次第に衰弱して喰料を※[#「冫+咸」、207−12]じ、動作困難にして、耳鳴|眩暈《めまい》して読書するにも更に何の感も無く、亦|喰物《しょくもつ》に味無く、只恍惚たるのみ。餘作にも語り合い、此儘にて空《むなし》く沈欝に陥る時は、或は如何に転変するに至らん乎と、自らも此れを案じ、餘作も共に慰めくれて、此際には精神上一大変化を実行して、此難関を一掃すべきの大奮励を要すべきを悟り、此れが為めには先ず例年暑中には海水浴を実行するを以て、此れに習い今回は温別《おんべつ》にて行い、且つ甞《かつ》て高岡氏より釧路支庁長に向うて予が為めに厚意を報ずるの一通あり、未だ釧路に出でざるを以て、此一通を釧路支庁長に呈し、且つ予が現状と牧塲の現状とを語るべし、
前へ
次へ
全50ページ中33ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
関 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング