りながら馬匹の遊ぶを見るは実に言うべからざるの感ありて、恰も太古にはかくやらんと思われたり。殊に此地は水清く、南に平原ありて沙地《すなち》なり。北には緑葉《りょくよう》の密に針葉樹多く、其奥に高山ありて、為めに小虫は少《すくな》し。
十七日、雨ふるも強て発して愛冠に向う。四里間に家無きも、山間或は原野にして、シオポロ川の源に出で、川畔に傍《そ》うて降《くだ》る。終日暴雨なり。后《ご》三時愛冠に着す。全身は肌迄|湿《うるお》うたり。夜中《やちゅう》熟眠す。夜半独り覚めて「ニオトマム」の成効して所有権を得るの後を思うて、尚全身若がえりたるを覚えたり。ああ昨日《きのう》馬上にて全身の冷水に湿うるを忍びて、却て大に健康を増加するを覚えたり。
廿九日、寛は札幌に向うて発す。
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牛十頭
馬九十五頭
畑地開墾四町
牧草地二十町
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      (三)

三十七年一月一日。
寛は札幌にありて牧塲を遥に祝す。
二月七日、又一帰塲す。
三月一日、瑞※[#「日+章」、第3水準1−85−37]北宝を舎飼《こやかい》とし、他の馬匹を昨暮《さくくれ》よりさる人に預けた
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