然に同氏と面会するに、かかる山間なる僻地に既往を伴氏の実子と語る事あるの奇遇を感じたり。
七日、三角測量吏吉村氏は※[#「陸」の「こざとへん」に代えて「冫」、201−1]別山に三角台を建《たつ》るが為めに来泊す。
此際道路新設にて、請負人堀内組病者多しとて、藤森彌吾《ふじもりやご》氏を以て頼み来れり。此れ我牧塲に向うて道路新設たるを以て、喜んで諾す。
此際土方人夫は逃げて北見に走る者多く続いて来り、予が一名にて留守するに当りても来り強て喰物を乞わるる事あり。或は川をわたり、或は裏口より突然に来《きた》るあり。或は跡より追い来るの人あり。其混雑なるは実に一種の世界たるを覚えたり。
八月廿七日、初雪あり。
九月十六日、堀内組病者診察として愛冠《あいかっぷ》に行くに、道を曲げて「ニオトマム」に馬匹を見んが為めに、「ヤエンオツク」を同行せり。王藏が番小屋に泊す。傍らに土人の小屋を立ててヤマベを捕るあり。其の小供は裸体にて山中をかけ走るを見る。ヤマベを釣り、味噌汁に五升芋とヤマベを入れて煮たる汁を喰す。最も妙味あり。且つ予は倒れたる枯木《こぼく》の丸太橋を彼方《かなた》此方《こなた》と小川をわた
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