に残し、同五日発にて牧塲に向う。落合迄※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]車、夫れより国境の嶮《けん》は歩行し、清水にて一泊。夫れより帯広に出で、来合わせたる又一に面話し、一泊。高島農塲に一泊。利別《としべつ》一泊。足寄《あしょろ》にて渋田《しぶた》に一泊し、西村|氏《し》が傷を診《しん》す。翌日土人一名を案内として傭《やと》い、乗馬にて早発し、細川氏にて休み、後《ご》三時牧塲に着す。其実况は左《さ》に。
細川氏にて茶を饗せられて径路を通行し、「トメルベシベイ」にて十伏川《とつふせかわ》を渡る。河畔《かはん》に鉄道測量の天幕あり。一名の炊夫《すいふ》ありて、我牧塲を能く知る。
最も懇篤《こんとく》に取扱いくれたるはうれし。茲《ここ》にて弁当を喰《しょく》す。茶を饗せられたり。此迄《これまで》は人家無く、附近にも更に人家無しと。河畔に土人小屋あり。此れ鱒《ます》を捕《と》るなりと。此れより山間の屈曲せる処を通る。径路あるも、然れども予が目には知る事|能《あた》わざるなり。数回《すかい》川を渡り、峻坂《しゅんはん》を登り、オヨチに至る。此処《ここ》は最も密樹の繁茂せるの間をくぐるには、鞍《くら》にかじりつきても尚危く、或《あるい》は帽を脱せんとする事あり、或は袖を枝にからまれて既に一身は落ちんとする事|数回《すうかい》なり。且つ大樹の為に昼尚暗く、漸く案内者の跡を慕うのみ。頗《すこぶる》困苦するも、先ず無事に亦河を渡り、平坦の原野に出でたるも、また密林あり。(現今クンベツ)且つ行《ゆ》く処として倒れたる大樹ありて、其上を飛越え、或は曲り或は迂回する等《とう》は、迚《とて》も言語を以て語り筆紙を以て尽すべからざるあり。亦|一《いつ》の驚きたるあり、オヨチにては蝮《まむし》多くして、倒れ木の上に丸くなりて一処《いっしょ》に六七個あるあり。諸方にて多く見たり。其度毎《そのたびごと》にゾッとして全身|粟起《ぞっき》するを覚えたり。
平坦地を通り過ぐるの処に密林あり、湿地あり、小川あり。其|傍《かたわ》らに蕗《ふき》の多く生えたるあり。蕗葉《ふきのは》は直径六七尺、高さ或は丈余なるあり。馬上にて其蕗の葉に手の届かざるあり。試《こころみ》に携《たずさ》うる処の蝙蝠傘を以て比するに、其|大《おおい》さは倍なり。此れより川を渉《わた》りて原野に出でたり。(今の伏古丹《ふしこた
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