罪過論
石橋忍月

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)之《これ》を

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)不幸|惨憺《さんたん》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)知らず/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 罪過の語はアリストテレスが、之《これ》を悲哀戯曲論中に用ひしより起原せるものにして、独逸語《ドイツご》の所謂《いはゆる》「シウルド」是《これ》なり。日本語に之を重訳《ちようやく》して罪過と謂《い》ふは稍々《やゝ》穏当ならざるが如《ごと》しと雖《いへど》も、世にアイデアル、リアルを訳して理想的、実写的とさへ言ふことあれば、是れ亦《また》差して咎《とが》むべきにあらず。
 吾人《ごじん》をして若《も》し罪過の定義を下さしめば、簡明に左《さ》の如く謂はんと欲す。曰《いは》く、
 罪過とは悲哀戯曲中の人物を悲惨の境界に淪落《りんらく》せしむる動力《モチイブ》(源因)なり
と。此《この》動力(源因)は即《すな
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