來よう。根源的空間性は根源的體驗における實在的他者性である。あらゆる他者性はここに根源を有する。反省の段階において客體の遊離が行はれるとともに、そこに客體的乃至觀念的他者性は成立つ。客體の世界が一部分の復歸を行ひ、こなたの主體を去つたままの姿でかなたの實在者即ち實在的他者に歸屬せしめられるとともに成立つ他者性こそ、客觀的實在世界の基本的秩序としての客觀的空間である。かくの如くであるとすれば、今客觀的空間より實在性を指し示す特徴を取除けば、殘るは客體的に顯はとなつた他者性、客體内容同志の間に成立つ純粹の他者性以外にはないであらう。このことはそのまま客觀的時間にも當嵌まる。そこに支配する他者性は單に一と他とは異なること互に他であることに盡きる。すなはち、「今」即ち時點の連續においては、一つの「今」を他の「今」より區別し得るものは内容的の何ものでもない。從つて一つの今が、最後のものとして、それに續く他の今の存在を拒む特殊の資格をもつことは、はじめより否まれる。かかる連續においては限界といふものは存在しない。すなはち始めも終りもあり得ない。尤も時は一定の方向を取つて進むことを特徴としてゐる故、
前へ 次へ
全280ページ中81ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
波多野 精一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング