なつた以上、時の流動推移は現在(今)の連續に過ぎぬものとなる。包括的なる一つの現在はいくつもの小現在に分裂し、かくて等質的ながらも他者性を内に含む、存在の客觀的秩序としての時が成立つ。これが客觀的實在世界の最も基本的秩序である空間の助けによつてはじめて存在すること、又それの像の助けを借りてはじめて表象され得ること、は當然といふべきである。かくて客觀的時間は、時の點即ち今(現在)の連續として、一定の方向に向ふ直線として表象される。各時點の關係は單に外面的即ち空間的である。一が他に非ず一は他と相容れぬといふだけに盡きる。一定の方向を有するゆゑ「前」「後」の別はある。しかもこれさへ、すでにアリストテレスの見拔いた如く(二)、本來は空間的規定なのである。それが過去及び將來とは全く別の事柄であるはもはや特に言ふを要せぬであらう。
空間化したる時間に外ならぬ客觀的時間においては、それの内部的構造は、空間においてと同じく、等質性即ち同一内容の單なる連續單なる繰返へしに盡きる。一と他とを區別するものは、單に、他であること、互に他であること以外にはない。このことは根源まで遡つて次の如く理解することが出
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