空間の場合と異なつて、終りの無いことが特に際立つた本質的特徴となる。これが即ち時の(即ち客觀的時間の)「無終極性」(Endlosigkeit)である。更に又次の點も考慮に値ひする。客體の面において觀念的他者性の支配する處においては、存在以外には何ものも無い。有と區別して無について語る場合、その無は一種の有即ち異なつた有り方に過ぎぬのである。これを時に當嵌めて言ひ換へれば、客觀的時間においては現在あるのみ、有即ち現在に對して無は單に他の有即ち他の現在に過ぎぬのである。すなはち、そこには存在從つて現在の連續あるのみ、この連續に斷絶を命ずるであらう眞の非存在はそこには見出されないのである。實在的他者性のある處には、一が他を滅ぼすこと有が無に歸することがあつた。そこには嚴密の意味における無が成立した。そこでは現在は過去となることによつて終極に達したのである。無終極性こそ客觀的時間の最も著しき特徴といふべきである。
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(一) Eddington: The Nature of the physical World. P. 63 ff. 參看。
(二) Physica, 219
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