なる對他性對外性の形式として、それは時間性と比べてむしろ抽象的派生的であるを免れぬ。しかしながら客體の固定ついでは實在化が行はれるとともに、それは優先權を主張するに至る。主體の内部的構造を示唆するやうな規定を排除しながら、しかも飽くまでも主體性を保存しようとするためには、これが殘されたる途なのである。すなはち客觀的實在世界の空間性はそれの實在性に基づく。それが空間的存在を保つのはそれが主體として表象されるより來ることなのである。主體と實在的他者性の間柄に立つことによつて客體は主體性を獲得し、そのことによつて更に空間性を獲得する。
かくの如くにして自然的生の支配の及ぶ限り空間性の支配も亦及ぶ。觀念的存在の成立とともに類を異にする他者性が現はれるに相違ないが、そこでさへ空間性の覊絆はなほ纒はつてゐる。純粹形相純粹客體の世界乃至は永遠的世界の具體的譬喩的表現が空間性の像を借りねばならぬのはここより來る(一)。觀念的世界そのものがすでに「上」の世界なのである。空間性は根源的には自然的生における實在的他者性であり、觀念的存在の成立とともにこの他者性は超越されるが、自己實現の新たなる領域において
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