く、自然的生において主體は實在的他者と直接的關係交渉において立つ。その場合吾々は二つの面又は契機を區別し得よう。第一は他者との交りにおける主體そのものの内部的構造であり、時間性はそれの性格をなす。第二は他者へと向ふ限りにおける主體の姿、即ち他者への存在としてのそれの基本的姿である。これが即ち空間性である。簡單にいへば、内に向ふ主體の姿が時間性、外に向ふ姿が空間性である。かくの如く空間性は根源的生の對他的對外的性格をなすものとして外面性相對性の最も基本的根源的なるものである。
それ故、自然的生が或る程度までそれ本來の權利を囘復することによつて客觀的實在世界が成立つに至つて、空間がそれの基本的形相をなすは當然といふべきであらう。客體の世界はそれの背後の主體的存在者に歸屬せしめられることによつて實在性を獲得する。實在者相互の關係は空間的でなければならぬ。實體は空間的存在を保ち、それの相互作用としての因果關係も空間の中において行はれる。空間性は客觀的實在性の最も基本的規定となる。空間性は根源的體驗まで遡れば時間性に對して決して優先權を有するものではない。主體の生の内部的構造より切離されたる單
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