つしぐらに突進する。それは認識の本質をなす觀想とは正に正反對の性格を持つ。心理的に言ひ表はせば、知性よりはむしろ意志乃至衝動として働く。かくて吾々はここに客觀的實在世界の認識の二重的性格に特に注意を向けねばならぬに至る。觀想そのものの本來志向する所より言へば、これは克服さるべき事態である。自然的生の名殘りを出來るだけ稀薄にすることによつて、可能ならば純粹客體へまで昇ることによつて、認識本來の志向ははじめて充たされるであらう。ここに、近世自然科學が現になしつつある如く、出來るだけ擬人的表象を遠ざけ、主體性を示唆するあらゆる規定を除かうとする努力が必要となる。しかしながらこの努力の成功には限度がある。例へば假りに力や作用を意味する規定を除き得たとしても、外面性・他者性・關係性を意味する規定は、我にあらざる我に對立する存在乃至それの聯關が除き得ぬ限り、なほ殘り留まるであらう。空間は實にかくの如きものである。
「空間」の本質を理解するためには、吾々は時の場合と同じく客觀的實在世界の基本的構造をなす客觀的空間より根源的體驗へと遡つて、自然的生における根源的空間性を見究めねばならぬ。すでに述べた如
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