務を超えたる、しかも甚だ困難なる課題となるであらう。吾々はただ當面の問題に必要なる程度に考察を限らう。客觀的實在世界の範疇のうち最も重要なるは實體性と因果性とである。實體性は、上に述べた所より直ちに推測し得る如く、畢竟主體性に外ならぬ。因果性は客體間の聯關意味聯關が實在的聯關に變じた場合に生ずる。すなはち、二つの客體乃至客體群が各別々の實在的中心の表現たる意義を擔ひつつ相聯關する場合には、そこに因果關係が成立つ。それは主體と實在的他者との關係に象られたるものである。この關係において主體は生の中心として外へ向つて働きつつしかも外より働きかけられる。能動性と受動性とは自然的生における主體の二重的性格をなす。そのことに應じて客觀的實在世界においては實體は互に能動者であり又受動者である。因果關係は相互作用として成立つ。客觀的世界像は人間の姿に象られて成立つといつても過言ではないであらう。
 尤もこれは客觀的實在世界が實在的である限りにおいて起る事態である。吾々は認識の實在的妥當性が自然的生への或る程度の復歸によつてはじめて可能となるを見た。しかるに自然的生は前後左右を顧みることなしに他者へとま
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