アとによつて、更に一が他を表現するに至る。かくてここに客體の世界に固有なる一事態が發生する。すなはち、客體は觀念的存在者として、實在的存在者としての主體との關係に立つが、そのことによつてそれは更に「意味」としての性格を擔ふに至る。意味には、内なるもの乃至隱れたるものを表はし出すといふこと、次に共通の中心によつて統べ括られることにより互に共通性乃至聯關を保つこと、がそれの本質的特徴をなす。全く孤立したるいはば一點に盡きる客體は、他者を離れたる主體と同じく、抽象乃至空想の産物に過ぎぬであらう。意味の無き客體は暗黒に等しく、もはや表現の任務を果し得ぬとともに、又觀らるべきもの觀想の對象でもあり得ぬであらう。かくの如く客體は主體によつて支へられつつ中心を有することによつて意味を獲得するが、又逆に主體も客體において表現を遂げることによつて單に隱れたる暗闇の存在にをはるを免れる。かくて主體は隱れたる中心に立ちその中心より生き又働くに相違ないが、顯はなる觀られ解される存在、意味ある存在を保つ限り、その存在は客體のそれに盡きる。客體及び客體的聯關、意味聯關、を離れて主體そのものを捉へようとする企てはす
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